旧年は大変お世話になりました。新年も何卒よろしくお願い申し上げます。
担当者が仕事始めにおこなわなければならない作業は、顕微鏡周りの片付け

ではなく、骨片の抽出に用いるパスツールピペットの準備です。
ちなみに顕微鏡は、20年前に大学のゴミ捨て場で拾ったパーツを、根性で組み合わせ、グリスアップして完動品にした
現在40年物のNikon SMZですが、顕微鏡下での細かい作業が不可欠なナマコ業界においては、
SMZの作業領域(対物レンズと試料の距離)の広さには本当に語りつくせないほど感謝しております。

工業生産品の先端内径1 mmのパスツールピペットでは、ナマコの骨片の抽出には誤差が大きすぎるので、
バーナーで炙って先端を伸ばすことで内径を狭め、経験的に最適と考える内径0.1~0.2 mmの状態に調整していきます。

パスツールピペットのように薄いガラスを溶かすのには家庭用ガスコンロなどでも十分なのですが、
重力の影響を考えて、上下に引っ張りながら加熱するにはバーナーが必要です。
この年季の入ったバーナーは15年ほど前に、函館の北水前の「黄色い手袋」のお店(釣り具、防寒着、食品、駄菓子、日用品、工具、資材、山菜保存瓶まで何でも揃う北水生の御用達の店舗)で買ったもので、長きに渡ってお世話になっています。
炙られるパスツールピペットも北水に在学していたころに研究費で買わせて頂いたものです。

バーナーによる作業が終わっただけでは実用できないので、不要な一端を折り取って、端処理を施す必要があります。

ダイヤモンドグラインダーで折口を削り、口径を整えていきますが、電源は入れず、指の力で砥石を転がしながら研磨を進めます。
電力で削ると、往々にして振動に耐え切れずにガラスが意図しないところで割れてしまいます。

端処理の出来栄えは、砥石の削り滓を意図する通りに吹き飛ばせるかどうかで判断します。

調整の完成したピペットにはビニールテープで印をつけます。
担当者は、溶解液や廃液の吸込み吸出しに使うものには黄色のテープを貼り、
ホールガラスからの骨片の抽出とスライドガラス、アルミニウムスタブへの滴下に使うものには黄色と赤色のテープを貼ります。

30分ほどの作業で、十数本の完成品をストックすることができました。
あれだけのピペットがあれば、あと十年は戦える・・・!
ということはなく、毎月2~3本ずつ減っていきますので、年に何回もおこなう大事なルーチンワークです。